やまいもの投資

風見鶏トレーダーの株式投資日記

期待値がプラスでもハイリスクなトレードはするべきではない数学的理由

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同記事の内容は、後に見解を替えておりますので、ご注意ください。

詳細は、次回以降の記事を御覧ください。

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リンクスリサーチの山本さんの動画を見ていたら、こんなことを発見してしまった。

 

https://www.youtube.com/watch?v=Z10qPEsCy5Y

 

結論から言うと

 

①勝つ確率と負ける確率がともに50%で、かつ、勝ち幅と負け幅が同じであれば、施行を繰り返すたびに残高は減っていく。
 要は五分の勝負を続けると、負ける運命にあるのである。
②そして、その施行がハイリスク・ハイリターンであればその減り方は顕著になる。
③よって、トレードがハイリスクであればあるほど、そのトレードに有意な優位性がなければならない。
④別の観点では、勝てば勝つほど保守的な態度でトレードするべきであり、勝って兜の緒をしめなければならない。勝ったあとの大負けはダメだ、ともいえる。

 

と、簡単にまとめるとそうなるわけだが、その理路を述べてみたい。


まず、単純な事実として、

「30%勝ったあと、30%負けると元に戻らない。」

である。

1.3×0.7=0.91 < 1

だから当たり前だ。

この勝ち負け10回繰り返したとする。そうすると、元本はいくらになるか。

当然減る。で、いくらになるか?

(1.3×0.7)^10 = 0.38。つまり、100万が元本だとすると、38万になる。およそ60%負けてしまうのである。

これを100回繰り返すとどうなるか。

0.00008019 。つまり、100万が元本だとすると、およそ80円になってしまう!!!

とんでもない減り方である。1回の施行で言えば、50%の確率で勝てるのである。1回の期待値は1であるのにもかかわらずである。

割と衝撃的で噛みしめ甲斐のある事実だと思う。


では、どの程度の優位性があれば、施行を繰り返しても元本は減らないか。

 

試しに「30%勝ったあと、25%の負ける」を繰り返してみる。

 

さて、リターンとしては5%の優位性があるが、これを繰り返すとトータルで勝てるのであろうか?(先程リターンと損失が同じ場合では、施行を繰り返せば繰り返すほど大きく損失が膨らんだ。)

 

さて、どうであろうか?


答えは、負けである。


10回繰り返して100万が76万円、100回繰り返して100万が7万9000円。
5%リターンに優位性があったのにである。

なかなか味わい深い。

今度は、10%の優位性があればどうであろうか。つまり、「30%勝ったあと、20%の負ける」を繰り返してみる。

 

そうすると、

10回繰り返して100万が148万円、100回繰り返して100万が5000万円。

流石に勝つ。

ということは、5%くらいの優位性ではダメで、10%くらいのリターンの優位性がなければダメ、というのが結論になるのか?
というとそうでもない。

もう一つ実験してみよう。今度は、同じく勝って負けてを繰り返すのだが、勝ち幅、負け幅を少し小さくしてみる。


「10%勝ったあと、9%の負ける」を繰り返してみる。

今回は、1%しかリターンの優位性はない。

結果は、

10回繰り返して100万が101万円、100回繰り返して100万が110万円。

僅かではあるが、勝ちである。

これをどう解釈するか。

ハイリスクの場合は、大きな優位性が必要で、ローリスクの場合は、小さな優位性でよい、ということになる。

つまり、損小利小 > 損大利大 

損小利小と損大利大を比べれば、まだ損小利小のほうがまし、ということが言えるのである。

別の言葉で言えば、攻撃力より防御力のほうが優位であると言えそうである。


ちなみに、低リスクで優位性のない場合はどうなるか。


「10%勝ったあと、10%の負ける」を繰り返してみる。

 

結果は、

10回繰り返して100万が90万円、100回繰り返して100万が37万円。

30%のときが、

10回繰り返して100万が38万円、100回繰り返して100万が80円。

だったから、だいぶ負け方が少なくて済むのである。


こうした事実を踏まえて、世の中を見てみると、いろいろなことに合点がいく。

 

ギャンブルってやっぱ負けるよね。

 

だって、そもそも胴元がいるので優位性がない状態を強いられる場合多いわけだし、もし胴元がいなくても
(リターン30%を目指すような)ハイリスクであれば、リターンで10%くらいは優位性がないといけないわけだし。しかも、ギャンブルだと、どうしてもハイリスクを狙いにいくでしょ。そりゃまけるよ。

また、期待値が多少プラスなら回数を繰り返せば、プラスになると錯覚するでしょ。だからやめられない。これも負けに突き進む要素だ。

それから、最初に検証した期待値が1なのに減っていくという事実であるが、この事実は一度勝って残高が増えると、投資資金を残高が増えた分だけ掛け金を増やすことに対応する。つまり、調子が良くなってきて行けそうだと思うと、掛け金を増やすのである。これが落とし穴になることを、先の事実は数学的に述べていると言えるかもしれない。


逆にこの事実に気づいているかもしれない人も見受けられる。それは億トレだ。億トレなどは、常に如何に損失を少なくするかに腐心するが、これなんかも、大きく勝ったあとの大負けの意味をよく分かっていると言えるのではないかと思う。

こうして考えていくと、投資を30ではじめて70まで続けるとすると、投資家人生は40年あるが、これを戦略的にプランする必要があるかもしれない。具体的に言うと、晩年は負けない投資を目指すべきであると。

少々つまらない結論になってしまって恐縮だが、これが現実かもしれない。

 

味わい深いのでここでの結論を再録しておく。

①勝つ確率と負ける確率がともに50%で、かつ、勝ち幅と負け幅が同じであれば、施行を繰り返すたびに残高は減っていく
②そして、その施行がハイリスク・ハイリターンであればその減り方は顕著になる。
③よって、トレードがハイリスクであればあるほど、そのトレードに有意な優位性がなければならない。
③これを別の観点で解釈すると、勝てば勝つほど保守的な態度でトレードするべきであり、勝って兜の緒をしめなければならない。勝ったあとの大負けはダメだ。

 

次回は、長期投資との絡めてもう少しこの事実を深掘りしていく予定である。